ある丘を降りる日

それが1泊であろうと、1か月であろうと、丘を降りる日は何かと複雑な気分になる。

テントの撤収は、実はこれまで丘では雨の日というのが1回しかないのだが、やはり最低でも霧、できれば晴れている日に丘を降りたい。テントのメンテナンスも必要になる上に、私のパッキングではテントをバックの中に収容する為、濡れていると何かと困るのだ。

釧路から離れる時は、かあさんがハイジにあがってくる時間にギリギリ間に合うかというあたりで、丘を下る。かあさんもそれが分かっているので、朝の主婦のお仕事を早めに切り上げて、普段より少しだけ早くあがって来てくれる。そして、握手をしてまた来年という会話を交わすのだ。どこかのユースみたいに、いってきますとは言わない。あくまで丘は帰ってくる場所だから。

ただ丘に上った時は、まあ長年のお約束になっている「ただいま」という挨拶になるのだが、まあそういう言葉を交わすのがそろそろ恥ずかしい年齢になったというのもあるだろう。

また、小樽や苫小牧から離れる時は、大抵一気に走るのではなく、殆ど弟子屈の宿に1泊する。そして荷物や洗濯物の整理をして、翌日には埠頭のある町へ向かい、最後の港町の1泊を楽しむというパターンが多い。なので必然的に丘の滞在日数が減るのだが、それはそれで旅にきているのだから楽しな工程でもあるのだ。

ここ最近は似合わないが美瑛や札幌で1泊したりしている。途中結構な頻度で経由したくなる町として、最近は夕張が挙げられる。弟子屈から美瑛経由で向かう時は、R333がお気に入りだ。ハイペースで美瑛に昼に到着し、吹上温泉まで登る時もある。どちらにしてもあまりこれまでいかなかった場所をルートに選ぶのが最近のお気に入りだ。

小樽や苫小牧では寿司やジンギスカンで最後の夜を楽しみ、朝出航する船に乗る。ちょっと寂しく、また旅を振り返るには丁度よい時間という感じだろうか。

丘を降りる朝は、朝食を早めに済ます。そして得てして多くの長期滞在のキャンパーが苦手な撤収作業にかかる。途方もない時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと片づける。順番を間違えて、また荷物を開く事もめずらしくない。少し片づけては一休み、そしてまたのそのそと片づけ始める。しかし最近の私は、北海道にいく時は荷物がシンプルに戻っているので、それほど時間はかからない。

丘で身についた撤収方法として、ペグを抜くのは最後という事。張る時も、まっさきに本体をペグで1本、地面に打ち込んで飛ばないように固定するのが私たちの張り方だ。このあたりは面白い事に、殆どの友人がそういう風に設営・撤収する。

そしてテントを畳むと、テントの下の芝の色がすっかり変わっている事に気がつく。数日パラダイスに居たという証拠なのだ。その時間が、そこに色として現れる。

パッキングされたバックなどを、自分のバイクにストレッチコードでしっかりとくくりつける。丘に残る者やハイジに挨拶をし、あの天国への道を下っていくのだ。

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